“ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド” ディカプリオを兄貴と呼びたい映画


<謎の集団 マンソン・ファミリー>編『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』本編映像 8月30日(金)公開

東京FMで土曜日にオンエアされているリリーフランキーのスナックラジオという番組で、リリーフランキー大先生が“ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド” を評して“デカプリオを兄貴と呼びたい映画”と言っていたのに激しく頷いてしまった。リリー大先生も絶賛のこの映画、amazon prime video でレンタルし、気がつけば72時間の時間制限中に3回視聴していた。

 

ロマン・ポランスキー監督の妻シャロン・テートが自宅でカルト集団に惨殺された実際の事件の“歴史修正モノ”の映画だが、あくまで事件そのものはバックグラウンドに過ぎず、映画の主題は落ち目のハリウッドスター(レオナルド・ディカプリオ=リック・ダルトン)とその付き人兼スタントマン(ブラッド・ピット=クリフ・ブース)の友情だ。

 

キャリアが行き詰まって自信喪失のリックに対して、「兄貴すごいよ、兄貴」的な太鼓持ちでおだててなんとか仕事を続けさせるクリフ。プロデューサーとの屈辱的なミーティングのあと、情緒不安定が極まって駐車場で人目もはばからずに号泣し始めるリックに、周りの視線を遮るためにサングラスをそっとかけてあげるクリフはさながら、傷心の飼い主の頬に伝う涙を舐めて慰める忠犬のよう(クリフにブランディという忠犬がいるのは、クリフがリックの“忠犬”であることを示唆しているのかもしれない)。

 

ハリウッドでは主役は貰えず悪役がせいぜい、若手スターにマウントされて辛くなってしまったリックは、心機一転イタリアで西部劇に出演することにする。“格下”のイタリア映画界に対して最初は渋々だったが、スター扱いされまんざらでもなくなり、イタリア人女優と結婚してアメリカに帰国する。とはいえ凱旋帰国というには程遠く、金食い虫の妻を養うためにプール付きの豪邸から引っ越さなければならず、もはやブースを雇うこともできない。帰国の前日にブースに解雇を告げるリック、ショックを受けつつも強がって“兄貴”の門出を祝う健気なブース。その直後に挿入されるモノローグが「親友以上恋人未満の関係の終わりを弔うには、夜通し酔いつぶれるしかない」。

 

ボーイミーツガールで男同士の友情が終わる青春映画は世界でこれまで100万作以上作られているだろうが、それをレオ様とブラピでやるのが空前絶後である。コメディに逃げずに、小っ恥ずかしい感じにならないで、カッコイイ映画になっており、タランティーノさすがである。