BOUNCE by Matthew Syed 読みました

 実家に帰った時に新宿の書店の洋書コーナーで買った本です。一言でこの本を説明するとするなら「松岡修造」です。は?と思われた方も多いと思うのでこれから説明してみようと思います。
 この本の言いたいことはただ一つ「何事(テニスだろうがチェスだろうがはたまた外科手術だろうと)でも一万時間練習すれば世界レベルで通用する。才能など関係しない。」ということです。著者のMatthewさんはイギリスで有名な卓球選手で、著者紹介にはオクスフォード大学を凄い成績で卒業して賞をとったことも書いてあります。凄いですね、やっぱりこのくらいの経歴がないとこの手の主張はできませんよね。全然関係ないでけど和田秀樹を思い出したのは僕だけでしょうか?
 ただしどんな凄い人であっても根拠なくその主張を信じられるほど我々現代人はナイーブじゃないんです。そこでこの本には色々と「努力一万時間説」の面白い根拠が挙げられています。
 まず遺伝ではなく努力がスポーツや研究のパフォーマンスの決定因子であるとの主張を補強するために著者が持ち出すのは、オリンピックの記録がどんどん向上していることです。もし遺伝子がパフォーマンスの良しあしを決定するならオリンピックの記録は向上しない、なぜなら100年や1000年のオーダーでは遺伝子の進化は起こらないからである。ではなぜ記録は着実に向上し続けているのか?それは練習の方法論が発達し、スポーツがプロ化することによってアスリートの練習時間が延びたからである、とこういう訳です。
 また、ハンガリーの学者が「才能ではなく努力が成功をもたらす」ことを証明するために、自分の娘を三人とも世界的なチェスプレイヤーにするという一種の実験を行ったことも述べられてます。欧米人はラディカルですね。
 あとは生物学的な観点からの根拠も示されています。練習時間の多いピアニストほどミエリン(神経細胞を絶縁している構造で、簡単に言えばミエリンが多いほど素早く脳から手足に指令を送ることができます)が多かったという研究があるらしいです。
 この他にも面白いエピソードがたくさんあるので気になった方は読んでみてください。松岡修造に叱咤激励されているような気分になること請け合いです。あと、この本はかなり平易な英語で書かれているのでおススメです。(まあ邦訳もあるみたいですが…)