The immortal life of Henrietta Lacks (かなり前に)読みました その3

ところでHenriettaさんが入院して勝手に細胞を「盗まれて」しまったJohns Hopkins病院ですが、貧しい黒人が多く住む地区に建てられたのは貧しい黒人たちに対して人体実験をするためだ、という噂が周辺住民の間ではまことしやかに囁かれておりました。しかしながらこれは単なる噂で、事実とは全く異なるものです。この病院の創立者であるJohns Hopkins氏は事業で財をなしましたが、その財産を残すべき妻子がいなかったため1873年に700万ドルをメディカルスクールと慈善病院設立のために寄付し、それをもとにJohns Hopkins病院が創立されたのです。また、Johns Hopkins氏は「黒人の」子供を援助するために200万ドルの寄付も行っています。このようにJohns Hopkins氏の崇高な理想の結実であったはずのJohns Hopkins病院ですが、徐々に創立の趣旨から外れ、1969年には同意を得ないで周辺住民(多くは貧しい黒人)の遺伝子を解析し、遺伝子と犯罪傾向の関係を研究しちゃいます。また、1990年代には黒人の子供たちを鉛に暴露する研究を行っていたとして家族から訴えられ、和解に持ち込んだものの、アメリカ厚生省が調査を行う事態にまで発展します。
 そんなこんなでHenriettaさんもその家族もそもそも細胞を採取されていたということすら知らなかったわけです。Henriettaさんの長男の奥さんが偶然その事実を知るのはなんと1970年代に入ってからです。
 ここで二つ目の問題が出てきます、それは「知的所有権」の問題です。長くなると思うので次に続きます。