BD(バンドデシネ)のこと ブラックサッド(Blacksad)

 BD(バンドデシネ)というのはフランスの漫画の事です。いきなりネガティブなことを書きますが、漫画と言うと世界的に見ても日本のマンガとアメコミが商業的には圧倒的だと思います。フランスでも日本のマンガが大人気でBDの売り上げが減っていて、専業のBD作家では生計を立てられないとかいう話も聞いたことがあります。ただし、作家ごとの画風の違いが大きくて飽きないことや、オールカラーが基本で非常に細かく書き込まれた絵などは、日本のマンガに慣れた目には新鮮です。ストーリーを楽しむ日本のマンガとは対照的に目で見て楽しむ絵本的な色彩が強いので、両者は全く違ったジャンルであるとも言えると思います。

  • なんでぼくがBDにハマったのか?

 ハマるきっかけになったのは「ブラックサッド(Blacksad)」というBDです。レイモンド・チャンドラーのハードボイルドな探偵小説をそのまま漫画にしたような作品なんですが、特筆すべきは全ての登場人物が動物だということです(擬人化ならぬ「擬獣化」)。主人公は黒猫の探偵で、舞台は(作中に明示されているわけではありませんが)戦前のアメリカだと思われます。様々な動物が人間のように二足歩行し、洋服を着て、車を運転するわけですが、作者の圧倒的な画力のおかげで全く不自然じゃないのが本当に凄いです。さらに凄いのが動物たちに人間の様な表情をさせていること。動物が嫉妬したり悔しがったりすることは基本的には無いので、「嫉妬した犬の顔」とか「悔しがっている猫の顔」というのはこの世に存在しないし誰も見たことがないわけですが、この漫画ではそれが再現されているのです。本当に魔法のようです。
 むかし僕が小学生のころ、「モンタナ・ジョーンズ」という子供向けの冒険モノのアニメがNHKでやっていました。当時ぼくはこのアニメにどっぷりハマっていて、エンディングで視聴者から送られてきたイラストを紹介するコーナーにイラストを送るほどでした。このアニメも登場人物が全て動物だったので、たぶんこれが原初体験になって嗜好を形成したんだと思います。