"The philosopher and the wolf" 狼に「幸せってなんだろう」と訊ねてみる

  • どんな本?

 哲学者である筆者は新聞広告で見つけた狼の子を飼い始めます。Breninと名付けた狼との生活は色々なことを教えてくれます。大学に講義しに行くときも学生たちとラグビーを楽しむときも筆者とBreninはいつも一緒です。二人は本物の兄弟のような絆を育んででいきます。幸せや死などの哲学的テーマを扱っていますが、一般向けに分かりやすく書かれている本です。Breninの行動が面白おかしく書かれていて犬(狼はさすがに飼えないですが)を飼ってみたい気分になります。

  • 狼に「幸せってなんだろう」と訊ねてみる

 人生において最も重要なモノは幸福でも目標でもなく「最高の瞬間」である。しかしヒトは計画して目標を達成する生き物で今を未来の準備として生きてしまいがちなため、「瞬間」を生きるということを最も苦手とするのです。

 一方狼は瞬間に生きる生き物です。著者が狼のBreninとフランスに滞在した期間、毎日決まった時刻に同じパン屋に行ってチョコパンを買ってBreninに与えます。もし人間だったらどれだけ美味しいパンであろうと毎日食べたらさすがに飽きます。しかしBreninは毎回ものすごく美味しそうにパンを頬張ります。狼は永遠の繰り返しの中に無上の喜びを見出すのです。

 人間は人生を「線」として見るため、どうしても現在の瞬間を過去や未来と比較してしまい「今」を生きることができません。「線」の彼方にあるあるはずの「目標」や「非日常」に囚われてしまう。美味しいチョコパンを食べても、「先月デパートで買ったチョコパンの方がおいしかった」とか「チョコパンじゃなくてクリームパンを買ったら良かったかも」等と考えてしまって結局今を楽しむことができない訳です。

  • 「最高の瞬間」とは

「最高の瞬間」とは目標を達成した瞬間である(キリッ
目標を達成したあと抜け殻になったあなたが見えます。

「最高の瞬間」って幸福感を感じてる瞬間では?
幸福感は怪しいク●リをキメても得られるよ?

探してた本当の自分が見つかった時
ニューエイジ系の本にはそう書いてあるかも。

 実は「最高の瞬間」とは、想像できる限りで最悪の状況であることが多いのです。筆者はBreninの最後の数週間、彼を寝ずに看病します。嫌がるBreninを押さえつけて2時間ごとに抗生剤を注射して患部を綺麗にする瞬間が筆者にとっての「最高の瞬間」だったと回想するのです。

 それでは一体「最高の瞬間」とは何なのかというと、希望も無く追い詰められそれでも進み続ける瞬間がそうです。その時に初めて未来の展望とか過去のしがらみからヒトは開放されて今を生きられるようになるのです。