"ニンジャスレイヤー ネオサイタマ炎上1"を読んだ

 いわゆるTwitter小説で、相当話題になったので今更な感はありますが読みました。

 妻子をニンジャに殺されたサラリーマン、フジキド・ケンジがナラク・ニンジャに憑依されてニンジャスレイヤーとなり復讐のために片っ端からニンジャを殺す話です。それ以上でもそれ以下でもありません。

 この小説はもともとアメリカ人の原作で、「アメリカ人のぼくが考えたさいきょうのニッポン」的な世界観の中で物語が展開されていくのがウリです。ストーリーよりもむしろ、ガイジンの妄想ニッポンを楽しむのが作法です。クエンティン・タランティーノ監督の「キル・ビル vol.1」みたいな感じです。

百聞は一見に如かずなので一部を引用するとこんな感じです。

カラオケステーション「タラバー歌カニ」へ向かうギリシアめいた広い屋外階段の左右には様々な露店が並ぶ。飴やタイヤキ、ライトゴス・ファッション・ブランド「憤怒」の路面店、バイオ金魚…パステルカラーのネオンが夜をはかない色彩でライトアップし、メカホタルの光の粒が飛び交う。

行き交うのはヤモト達と同様、制服姿を思い思いにカワイイアレンジした近隣の女子高生たち。ファッション、甘味、社交。このストリートはティーン少女の欲求に、いびつなまでに完璧に答える。祭めいた階段の頂でライトアップされるタラバー歌カニの姿はさながらシャボン玉めいた幻想の殿堂である。

                  (中略)

この小窓こそ、「タラバー歌カニ」をカラオケチェーン店のトップシェアに立たせしめた画期的システムの秘密である。各カラオケ室は階の中心から放射状に配置されており、すべて、この小窓が各階中央のカニ配膳室に接続されている。

小窓の脇にある「蟹」ボタンを押すと、中央の配膳室からコンベアーベルトによって即座に、加減良く茹でられたタラバーカニの脚が送り込まれる。しかもこのカニは食べ放題、ボタンは押し放題なのだ。クローン・タラバーカニの危険性は厳重な管理で最小限に抑えられている。何たる画期的システム!

「ヤモト=サン、それ押しすぎ!」アサリが笑った。キャバァーン!キャバァーン!キャバァーン!時間差で蟹ボタン受領効果音が鳴り響く。「いっぱい来ちゃうよ!」ヤモトは慌てて「音が鳴らなかったから、つい」「じゃあ私も!」オカヨが笑い転げながらボタンを連打する。キャバァーン!キャバァーン!

「やめなよ!」五人は笑い転げた。やがて「イヨォー」という音声とともに小窓のコンベアーから大量のカニが流れてくると、五人はさらに笑い転げた。こうした騒ぎは何が理由でも楽しく、笑いを誘うものなのである…。

「女子高生」、「カラオケ」、「かに道楽」、「ゴスロリ」…現代日本っぽい要素をこれだけ濃縮した文章を書くのは日本人でも難しいのではないでしょうか?むしろ外国人にしかできない芸当な気もします。

 あえて一言言うなら、縦書きではなく横書きだったらもっとtwitter連載時の雰囲気がでて良かったと思います。