トマス・ピンチョン"競売ナンバー49の叫び"を読んだ

ラジオDJの夫暮らしている主婦エディパ・マースが突然むかし付き合っていた大富豪ピアス・インヴェラリティの遺産執行人に指名され、遺産の調査を進めていくうちに「トライステロ」という謎の郵便組織の影がちらつき出す…というストーリーです。タイトルが独特なので結構知名度の高い小説なのでは?

トライステロが実在するのか、それともピアスがエディパに遺した壮大な悪戯なのかははっきり示されません。その上、エディパの精神分析医・ヒレリアスが発狂してクリニックに立て籠ったり夫のムーチョが(ヒレリアスから処方された)LSDをキメるようになったりします。誰が正気なのか分からないパラノイア的雰囲気が物語をさらに混沌とさせます。トライステロは実在するのか、ピアスの悪戯なのか、それともエディパのパラノイアの産物なのか?

「競売ナンバー49の叫び」以外にも、「マトリックス」や「ビューティフル・マインド」など妄想を主題にしたストーリーが人気なのは、目の前の「現実」が自分の妄想であるかもしれないというデカルト的な不安が結構普遍的な証拠なのかもしれません。